環境科学センターにおける有機廃液処理

大学で発生する廃棄物は、工場などから排出される一般の産業廃棄物に比べて量的には多くないが、
形態・成分などの質的側面から見れば、極めて多種多様である。
また、その発生量の時間的、季節的変動が大きく、発生源も広く分散している。

大学で発生する実験廃液のこのような特殊性を考えると、
各部局、各実験室など廃液の発生の原点で安全化処理の方策を考えることが最も重要である。
即ち、実験廃液は、各実験室の段階で排出者の責任で、処理システムに適合した分別収集をすることが原則である。

本学では1977年に有機廃液焼却処理装置(サンレー冷熱㈱)が設置され、
以来、2017年7月まで有機廃液の処理運転を継続してきた。しかし、更新された有機廃液処理装置も約19年を経て老朽化が進行し、運転を継続することが困難となった。
このため、2017年9月から全面的に外部委託処理に移行することとなった。

有機廃液について

教育研究活動に伴って発生する試薬や溶媒等を含む廃液は、産業廃棄物のうち、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)の定める特別管理産業廃棄物に該当し、通常の産業廃棄物よりも厳しく管理しなければならない。

法定の有害物質を含む場合は、特別管理産業廃棄物のうち、特定有害産業廃棄物に分類される。

廃棄物(廃液)は、運搬・処理工程すべてにおいて追跡管理され、発生した問題の原因が排出者にあった場合、その排出者責任が問われることになる。

有機廃液処理の流れ

分別保管

下記の分類表に従い、分別して保管する。
大学指定の統一規格の10Lポリ容器を使用する。
破損・変形した容器は使用しない。

有機廃液処理案内メール配信

年4回(5・9・11・1月頃)、有機廃液処理の外部委託を行う。
環境科学センターより、都度案内を配信する。

廃液処理申請システムにて申請

廃液処理申請システムに必要事項を入力する。
廃液処理日程申込フォームより、搬入・分析希望日を記入し提出する。

廃液の搬入・分析及び前処理

指定日時に環境科学センターに廃液を搬入し、
分析及び前処理を実施する。

廃液運搬・処分

収集運搬業者により運搬後、工場にて焼却処理を行い、
埋め立て処分する。
搬出日には排出責任者の立合いを求める。

容器返却

廃液処理完了後、環境科学センターへ容器が返却される。
排出責任者に日時を案内するので、容器を回収すること。

有機廃液の分別貯蔵

有機廃液は、下記の分類表に従い8種類に分別して保管・処分する。

有機廃液分類
内容
分類例
①可燃性有機廃液
有機溶媒類
酢酸エチル、ヘキサン、ベンゼン、
アルコール類 など
②可燃性有機廃液
(有害物質含有)
有機溶媒類
(有害物質を含有するもの)
③不燃性有機廃液
有機溶媒あるいは有機化合物を含む水溶液類
アルコールなどの水溶液
④不燃性有機廃液
(有害物質含有)
有機溶媒あるいは有機化合物を含む水溶液類
(有害物質を含有するもの)
⑤高ハロゲン系有機廃液
ハロゲン濃度が10w/w%以上の廃液
クロロホルム、ジクロロメタン
⑥オイル類
灯油、重油、機械油等の鉱物油及び動植物油
⑦写真廃液
写真現像液
⑧混合不可廃液
高反応性廃液
二層分離廃液 など

廃液中に混合してはいけないもの

  • 引火点の特に低い有機物(エーテル、二硫化炭素、石油エーテル 等)
    • 収集・運搬時に火災を発生させる恐れが無いよう、高沸点溶媒等により適宜希釈を行い、引火点を上げる必要がある。(低沸点化合物濃度20%程度)
  • 爆発の危険を有する物質(過酸化物、ジアゾ化合物等)
  • 放射性物質
  • 特定有害物質(有機リン,水銀及びその化合物,PCBなど)
  • 腐食性物質(強酸、強アルカリ、アルコキシド等)
    • 酸性ならば炭酸ソーダ、アルカリ性ならば酢酸を用いてpH6~8の範囲に調整し、100メッシュの金網を用いてろ過処理を行い搬入する。有機アミンやアンモニア水による中和処理は行わない。

有害物質

有機廃液を分類する際に「有害物質」とされるのは、クロロホルム及び法令に定められた「特定有害産業廃棄物」に該当する16物質で、下表に示す合計17物質である。

有害物質として扱う物質
クロロホルムトリクロロエチレンテトラクロロエチレン
ジクロロメタン四塩化炭素1,2-ジクロロエタン
1,1-ジクロロエチレンシス-1,2-ジクロロエチレン1,1,1-トリクロロエタン
1,1,2-トリクロロエタン1,3-ジクロロプロペンチウラム
シマジンチオベンカルブベンゼン
セレン1,4-ジオキサン

参考:環境省_特別管理廃棄物規制の概要 (env.go.jp)

分別貯蔵上の注意

  • 環境科学センターで回収された有機廃液は、センター内に保管された後、外部処理業者のトラックで運搬される。保管・運搬上の安全を確保するため、大学が指定する統一規格の10Lポリ容器に分別貯蔵すること。
  • ポリ容器を購入する際は、環境科学センターから予算振替で購入する。
  • 破損した容器や著しく変形した容器は使用しないこと。搬入前にはキャップがきちんと閉まるかどうか、容器を傾けて漏れが無いかどうかを必ず確認する。
  • ポリ容器は、原則として3年間で廃棄処分とする。
規定のポリ容器

廃液処理申請手順

  • 有機廃液処理は,年4回(5月頃、9月頃、11月頃、1月頃)外部委託により、学外にて行われる。
  • その都度全学メールで案内を配信するので、有機廃液処理を希望する者は、申請期間内に廃液処理申請システムhttps://kit-wlas.net/app)によってWeb申請を行う。 システムには、研究分野等に配付済みのアカウント情報でログインする。
    • アカウントが無い、利用方法がわからないなどの場合は、環境科学センター 廃液処理担当(environ(at)kit.ac.jp)までご連絡ください。※(at)は @ に置き換えてください。
  • Web申請後、環境科学センターホームページの有機廃液処理日程申込ページ(都度開設)より、廃液の搬入・分析希望日を記入して提出する。
  • 申請者は、申請期間終了後環境科学センターが割り当てた日時に環境科学センターに廃液を搬入し、分析と前処理を行う。

廃液処理システムマニュアル(PDF)

入力項目記載内容
注意点等
①容量
搬入できるのは規定の10Lポリ容器のみ。
②廃液の分類
8つの廃液分類の中から該当するものを選ぶ
③主たる内容物の構成
廃液中のすべての含有物名及びその割合等
できるだけ詳しく,正確に記入すること。
④有害物質
前述の17物質を含む場合、その名称を記載する
含有量が少量でも「(有害物質含有)」の廃液に分類すること。
⑤低沸点溶媒右記の4物質を含む場合、その名称を記載する
消防法に定められる危険物第四類特殊引火物に該当する以下の4物質を低沸点溶媒として扱う。
 ジエチルエーテル、二硫化炭素
 アセトアルデヒド、酸化プロピレン
⑥排出責任者情報所属,研究分野,責任者氏名,連絡先(内線電話・E-mail)
学生実験の場合は,学生実験名も記入する。
⑦振替予算情報
所管・財源・目的
翌年度に処理費用の受益者負担額を有機廃液処理費用とともに予算振替で徴収する。

搬入・前処理手順

注意事項

  • 廃液は、指定された日時に環境科学センターの旧有機廃液処理室北側にある排気フード施設に搬入する。
  • 廃液の分析及び前処理は、必ず指導員あるいは指導員に委託された教職員の立ち会いのもとで各研究室が責任を持って行う。学生だけで前処理を実施しない。
  • 分析及び前処理は、後述の手順で行うこと。不明点があれば、有機廃液処理主任あるいは環境科学センター教職員に相談する。
  • 保護具・保護衣(白衣、手袋、保護メガネ等)を着用して前処理を実施する。
  • できる限り曝露がないように作業する。
  • 廃液を可能な限りこぼさないように前処理を行う。

持参物

  • 拭き取り用の紙タオル
  • ゴミ袋(使用した使い捨て容器や紙は各自研究室に持ち帰り廃棄する。)
  • 保護具・保護衣(手袋、白衣、保護メガネ等)

前処理手順

1.センター教職員より、貸出器具等一式を借り受ける。

  • iPad 1台
  • 分析用器具収納Box駒込ピペット
    • ピンセット
    • 比重計(軽・重)
    • 着火用ライター
    • 蛍光X線分析装置試料作成用物品
      (セル窓、セル組立治具)
    • pH試験紙
  • メスシリンダー

この他に、廃液の分類を示すラベル(分類ラベル)を入れたラベルBOXと廃液タンクそれぞれの排出元名称、内容物が記載されたラベル(搬入ラベル)を受け取る。

拭き取り用の紙タオルとゴミ袋は各研究室が持参し、前処理終了後各自持ち帰る。

2.廃液のpHを調べる。

  • pHはpH試験紙を用いて調べ、酸性ならば炭酸ソーダ、アルカリ性ならば酢酸を用いて、
    pHを6~8の範囲に調整する。
    • 炭酸ソーダと金網、漏斗、ひしゃくはセンターに用意されている(酢酸は各研究分野で用意すること)。廃液のpH調整は、排気フードの下で換気しつつ行う。
    • pH調整に用いた炭酸ソーダ残渣は100メッシュの金網を用いて除去する。
      ろ過後2,3日経過すると、また沈澱してくるので注意する。
  • ろ過後の炭酸ソーダ残渣は、各研究分野等へ持ち帰り乾燥して保管し、
    固形廃棄物として固形廃棄物処理申請期間に処理を申し込む。

⚠ 中和時は発生した気体を吸い込まないよう、ダクトの下で作業する。

3.廃液に沈澱物及び浮遊性物質が含まれていないか、廃液が二層に分かれていないかを確認する。

  • 廃液に含まれている沈澱物・浮遊物は100メッシュの金網を用いて除去する。
    これを通過するような細かい物質が含有している場合は、工業用のろ紙(各研究室で用意すること)により除去する。
  • 水と溶剤の二層分離の廃液や高反応性廃液については、混合不可廃液として申請すること。

4.比重計で比重を測定する。

  • メスシリンダーに廃液を分取し、比重を測定する。
    ポリタンクに十分廃液が入っている場合は、タンクに直接比重計を入れてもよい。
  • 比重計は軽いものから使用する。重い比重計から使用すると、廃液の中に沈む可能性がある。

5.燃焼テストを行う。

  • 少量の廃液を駒込ピペットで蒸発皿(排気フード施設の外に置いてある)に取り、
    着火用ライターで火をつける。燃え方を見て,下記の区分から該当するものを選択する。
  • 燃焼テストは、必ず廃液などの可燃物から十分離れ、危険がないことを確認して行う。
  • 備え付けの耐火煉瓦を用いて蓋をして消火する。
  • 完全に消火されたことを確認し、
    残りの廃液を元のポリタンクに戻す。
  • 蒸発皿は紙で拭き取り、元の場所に戻す。

⚠消火時は足で蹴らずに、耐火煉瓦を使用する。
⚠メタノールなど、炎が見えにくい溶剤を含む廃液の燃焼性を確認する際は注意して作業する。燃焼性を確認後、蒸発皿を触る前に耐火煉瓦で消火する。

分類燃え方
易燃性燃えやすく熱量が多い
可燃性自然性はあるが熱量が少ない
難燃性火はつくがすぐに消える
不燃性まったく火がつかない
アルコール類などで視認しにくい炎を出す物質もあるので、確認は慎重に。

6.廃液中のS,Clの含有率を測定する。

  • 環境科学センター有機廃液処理施設内に設置したエネルギー分散型蛍光X線装置で廃液中のS,Clの含有率を測定する。
  • 測定用試料の作製は、有機廃液処理施設に設置されている活性炭付ドラフトチャンバー内で処理施設に設置したマニュアルに従って行う。
  • 作製したセルから中の液がこぼれないことを十分確認すること。
  • 測定後、試料セルを分解する。使用したセル枠、セル窓等は各研究室で廃棄する。

  • Clの含有率が10%を越える場合高ハロゲン廃液として廃液分類を選択する。
  • 有害物質を含有していないと思われる試料でClの含有率が1%を超えた場合、内容物を再度確認する。
    • ジクロロメタン、クロロホルムなどの有害物質が少量でも含有している場合は、「有害物質含有」の区分に変更する。
    • 塩素を含む有機化合物が原因の場合、Clが1%を超えたら「有害物質含有」の区分に変更する。
    • 塩化ナトリウム、塩酸などが原因の場合は備考に物質を記入しておく。無機塩素化合物は有害物質に分類されない。

7.廃液タンクにラベルを貼付する。

  • 分析及び前処理終了後、廃液分類が間違いないことを確認してラベル類をタンクの所定の位置に貼付する。
  • 廃液の排出者・内容物等を印刷した「搬入ラベル」をタンクの背面に貼る。廃液の分類を示す「分類ラベル」は、タンクを並べたときにも見やすいようタンク背面の肩の部分に貼る。
  • 廃液の漏れがないか確認する。

8.廃液タンクを保管場所に運ぶ。

  • ラベルを貼付した廃液タンクは、センター職員の指示する保管場所へ搬入する。

9.貸出器具等一式を返却する。

  • 貸出確認書及び廃液等搬入台紙をセンター教職員とともに確認し、貸出器具一式を返却する。

搬出・処分

前処理の全日程完了後、収集・運搬業者により廃液が搬出される。
排出者責任のもと、搬出に立ち会う。(廃液の搬出時間は処理完了後メールにて配信する。)
運搬された廃液は、適正に焼却され、埋め立て処分となる。

容器返却

焼却処理完了後、ポリタンクが返却される。
(混合不可区分及び規定外または廃棄のタンクは返却されない。)
返却日を案内するので、指定日時にタンクを回収する。