環境科学センターにおける無機廃液処理

本学では、1977年(昭和52年)の有機廃液学内処理の開始に続き、1980年(昭和55年)に無機廃液処理装置(中和凝集法)による無機廃液の学内処理を開始した。2002年(平成14年)には無機廃液処理装置を更新し、還元能を持つ鉄粉による重金属の析出と溶解した鉄イオンによる凝集沈殿を利用して、廃液中の重金属を回収する鉄粉法と呼ばれる処理方法に変更した。
無機廃液処理においては、研究分野等から排出される無機廃液に加え、学内の有機廃液処理に伴って排出される2万Lを超える洗煙廃水の処理も行ってきた。

40年以上の長きにわたって継続してきた無機廃液の学内処理(処理業務は専門業者に委託)であるが、2017年(平成29年)の学内有機廃液処理装置の停止と学外処理への移行により、無機廃液の処理量は大幅に減少した。さらに、無機廃液処理施設の老朽化が進行したこともあり、2022年(令和4年)をもって学内の無機廃液処理装置の運用を終了した。

2023年(令和5年)からは、外部業者に廃液の収集、運搬、処理を委託する。

無機廃液処理の流れ

無機廃液の分別保管

各実験室においては、無機廃液を以下に示す6つの分類ごとに貯蔵する

無機廃液分類

無機廃液は、分別・貯蔵上の注意点を守って貯蔵する。

廃液処理申請システム

無機廃液処理を希望する者は、申請期間内に廃液処理申請システムhttps://kit-wlas.net/app/)によって、Web申請を行う。

無機廃液処理は年2回実施する。

廃液の搬入

利用者は、指定された日に、内容物が記されたラベルと廃液分類、液性等を示すラベルをタンクに貼付した上で、廃液処理室に搬入する。

廃液の運搬・処分

廃液の搬出時には、排出責任者が立ち会う。

廃液は、収集運搬業者により廃棄物処理工場に運搬され中間処理を経て焼却処分される。焼却灰及び煤煙の残渣の一部はセメント原料などとしてリサイクルされ、その他は埋め立て処分される。

廃液タンクの返却

処理終了後、廃液タンクを返却する。

無機廃液の分別貯蔵

  • 各実験室においては、無機廃液は下表に示す6つの分類ごとに貯蔵する。
Ⅰ水銀含有廃液
Ⅱ シアン含有廃液
Ⅲ 有害重金属含有廃液Ⅳ 一般重金属含有廃液
Ⅴ 無機酸廃液Ⅵ 無機アルカリ廃液

分別貯蔵上の注意

  • 発生の経緯が同じである廃液が比較的多量にある場合は、同じ区分であっても他の廃液とは混合せず単独で貯蔵し、処理に出すことが望ましい。
  • ある区分の廃液中に少量の他の区分の化合物が混入することはやむをえない。その場合は、内容物を正確に記録・表示しておくこと。
  • 無機廃液処理の際に搬入が可能であるのは大学が指定する20Lのポリ容器のみであるので、注意すること。また、傷んだポリ容器は絶対に使用しないこと。

無機廃液分類

無機廃液分類
廃液に含まれる対象物質
注意点
Ⅰ 水銀含有廃液
無機水銀、有機水銀化合物を含む廃液
水銀を含む廃液は、無機水銀、有機水銀を問わず、無機廃液処理申請期間に申請する。
Ⅱ シアン含有廃液遊離シアン(NaCN, CuCN 等)
シアノ錯体(K3[Fe(CN)6] 等)
青酸ガスの発生を避けるため、pH10以上に調整する(シアノ錯体のみの場合も同様)。
Ⅲ 有害重金属含有廃液Cr(3価を含む)、Pb、Se、Cd、Asの化合物を含む廃液
有害重金属を少量でも含む場合は、Ⅲに分類する。
Ⅳ 一般重金属含有廃液Fe、Ni、Co、Zn、Cu、Mn、Ga、V、Ti、Ge、Sn等の化合物を含む廃液Al、Mg、Caなどの軽金属化合物を含む廃液は、pHによりⅤまたはⅥに分類する。
Ⅴ 無機酸廃液
塩酸,硝酸,硫酸などフッ化水素酸はフッ化水素の発生を避けるため、pH10以上に調整し、Ⅵ無機アルカリ廃液として取り扱う。
Ⅵ 無機アルカリ廃液水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム 等中性(pH7)の場合は、Ⅴ無機酸に分類する。

廃液中に混入してはいけないもの

1)固形物質
廃液中の固形物質の存在は作業を困難にするので、
沈殿物、浮遊物がある場合は、100メッシュの金属網を用いて濾過する。
ろ過残渣は固形廃棄物として処理を依頼する。
2)有機化合物
有機物は施設の処理能力を著しく低下させるので,
有機化合物が含まれる場合は原則として取り扱わない。
3)有毒物質
処理中作業員に著しい健康障害を引き起こす危険性のあるもの。
Be, Tl(タリウム), Osを含む化合物、ニッケルカルボニル等。
酸性のシアン廃液。
4)爆発の危険を有する物質
シアン処理剤(次亜塩素酸ナトリウム)との混合で爆発の危険を
有するもの。
過酸化物あるいは過塩素酸塩等の爆発の危険性を有する物質。

有機廃液処理の際にに排出する廃液

以下の廃液は、有機廃液処理の際に処理申請すること。

1)写真廃液(現像液、固定液)
2)錯形成剤(EDTA,酒石酸等)が混入している廃液
3)有機リン化合物を含む廃液

廃液処理申請システム

  • 無機廃液処理は、年2回(6月、12月頃)実施する。
  • 全学メールで無機廃液処理申請についての案内を配信するので、希望する者は申請期間内に廃液処理申請システムhttps://kit-wlas.net/app/)によって、Web申請を行う。
  • システムには,研究分野等に配付済みのアカウント情報でログインする。
  • 廃液の登録は1タンクごとに行う。
  • 入力項目は下表の通り。

廃液処理申請システムマニュアル(PDF)

入力項目内容注意
廃液の分類
前述の6つの分類と液性を合わせた12の分類から該当するもの1つを選ぶ
内容物と濃度 (mg/L)
廃液中のすべての含有物名及びその濃度
できるだけ詳しく,正確に記入すること。
記入に不備のある場合は,処理を受け付けないことがある。
容量
搬入できるのは20Lのポリ容器のみ。
pH
有害重金属有害金属含有廃液の場合、含有する金属の元素記号を記入する有害重金属含有廃液の場合は必須入力項目
シアン化合物シアン化合物を含有する場合、含有するシアン化合物の化学式を記入シアン含有廃液の場合は必須入力項目
備考ごく少量の有機物を含有する場合など、
処理に当たって注意すべき事柄を記入する。
振替予算情報
所管・財源・目的
処理費用の受益者負担額を有機廃液処理費用とともに翌年度に、予算振替で徴収する
排出責任者情報
所属,研究分野,責任者氏名,連絡先(内線電話・E-mail)

※ アカウントが無い、利用方法がわからないなどの場合は、環境科学センター 廃液処理担当(haieki〔at〕environ.kit.ac.jp)までご連絡ください。 (〔at〕は@に変換してください。)

廃液の搬入

  • 利用者は、廃液処理の案内メールに記載された指定日に廃液を廃液処理施設内に搬入する。
  • 搬入した廃液は、液性に基づいて下表のように再分類する。
  • 整理番号、研究分野名および内容物が記されたラベル(搬入ラベル)と廃液の分類を示すラベル(分類ラベル)及び液性を示すラベル(液性ラベル)をタンクに貼付する。
  • さらに、シアン含有廃液の場合は含有するシアン化合物名を記載したラベルを、有害重金属含有廃液の場合は含有する有害重金属の元素名を示すラベルを貼付する。
  • 必要なラベルを貼付した廃液タンクは指定された場所に置く。
廃液分類液性による分類
Ⅰ 水銀含有廃液液性による分類は不要。
Ⅱ シアン含有廃液有害な青酸ガスの発生を避けるため、すべてpH10以上のアルカリ性に調製する。
Ⅲ 有害重金属含有廃液Ⅲ-1 酸性Ⅲ-2 アルカリ性
Ⅳ 一般重金属含有廃液Ⅳ-1 強酸性Ⅳ-2 強アルカリ性Ⅳ-3 酸性Ⅳ-4 アルカリ性
Ⅴ 無機酸廃液Ⅴ-1 強酸性Ⅴ-2 酸性
Ⅵ 無機アルカリ廃液Ⅵ-1 強アルカリ性Ⅵ-2 アルカリ性

無機廃液処理の処理工程(外部委託処理)

適正に分別・回収された無機廃液(水銀含有廃液を除く)は、アサヒプリテック株式会社に運搬及び処分を委託している。
大半の廃液は同社の神戸工場で「凝集沈殿処理」「シアン分解処理」「中和処理」によって中間処分された後に最終処分場に運搬され焼却処分される。
焼却後の残渣の一部はセメント原料などとしてリサイクルされ、その他は管理型最終処分場で埋め立て処分される。

水銀含有廃液は、水銀を含む固形廃棄物とともに旭興産業株式会社に運搬及び処分を委託している。
水銀含有廃棄物は野村興産株式会社のイトムカ鉱業所で処分される。
多段式焙焼炉により気化された水銀は回収されて、試薬として使用されるほか、蛍光灯や特殊計測機器等に再利用される。

廃液タンクの返却

  • 無機廃液搬入者には廃液処理終了後タンクの返却日時をメールで連絡するので、時間厳守で回収のこと。